はりねずみ教

難しいことを分かりやすく!

感染症とアレルギー疾患について

私の家族(妻と子供と自分の3人)はこの年末年始、というか子供が生まれてから何度も体調を崩しているので、ここらで体調不良と言っても色々あることを整理したいと思います。薬の飲み方とか間違えると大変なので。

 

病気系の体調不良の種類

まず、いわゆる病気扱いされる「体調不良」の分類です。ちょっとお腹が痛い、睡眠不足等の軽いものや、がんなどの重いものは除きます。

ざっくり分けると①感染症と②アレルギー性疾患の2種類です。

 

感染症

①ー1:細菌感染

概要:細菌の感染による風邪。一般的には、咳が出るだけ、鼻水・鼻づまりだけ等、特定の症状だけが出ることが多い

効く薬:抗生剤が効く

そもそも細菌とは…ものすごく小さい生き物だと思えばOK。自分自身の設計図(DNAやRNA)を持っていて、かつタンパク質を作る工場も自分の体の中に持っているので、自分で自分を作れる=増殖できる

①ー2:ウィルス感染

概要:ウィルスの感染による風邪。コロナウィルスとか。咳や鼻水、くしゃみ、関節痛、発熱など、様々な症状がいっぺんに出るケースが多い。ほとんどの風邪はこちらのウィルス感染によるもの

効く薬:無し。抗生剤は効かない。なぜならウィルスは生きものではないから。カロナール等の風邪薬は発熱やだるさなど表面上の症状を抑えてくれるだけで、別にウィルスをやっつけてくれるわけではない。ではなぜ治るかというと、免疫で治っているだけ。(インフルエンザなどよく流行るウィルスには効く薬もありますが、タミフル等の例外を除いて一般の病院ではほとんど使われていない&処方されない)

そもそもウィルスとは…DNAやRNAなどいわゆる生きものの設計図の欠片。だたの欠片がふわふわ浮いているだけ。タンパク質を作る工場などもちろん持っていない。ではどうやって自分自身の複製を増やしていくかと言うと、人間などに感染して、人間の中にある工場を使って、自分の複製を増やす(この状態を感染と言う!)

②アレルギー性疾患

概要:本来は、外部から入ってきた細菌やウィルスだけを攻撃すべき免疫が、間違って自分自身を攻撃してしまうことで生じる体調不良のこと。アレルギー性鼻炎、喘息、IgA腎症、コロナの肺炎でしばしば起きるサイトカインストームなど

効く薬:私の奥さんが大好きなステロイドステロイドには免疫を抑制する働きがある。なので、あまり使いすぎると、免疫が弱くなるという副作用がある。IgA腎症の治療でステロイドパルス(ステロイドの点滴&投薬)をやると、副作用として肺炎のリスクが上がるのはそのため。あたりまえだけど感染症にかかっているときに使うと危険。感染症と戦ってくれるはずの免疫を抑えてしまうから

そもそも免疫とは…自分の体と、細菌やウィルスと等の部外者とを判別して、部外者だけを攻撃し、排除するはずの仕組み。ただときどき判断をミスって自分の体も攻撃してしまう

 

結論

要は基本的には

細菌性感染症…抗生剤を使いましょう(ただし使いすぎには注意)

ウィルス性感染症…風邪薬等で症状を抑えつつ、免疫で頑張りましょう(抗生剤は効きません)

アレルギー性疾患…必要に応じてステロイドなどを使いましょう(ステロイド感染症に使わないように!)

という事です

ちょっと寄り道①-RNAワクチンについて

本筋とは関係ないですが、「そもそも細菌とは」「そもそもウィルスとは」のところに書いた、細菌はタンパク質を作る工場を持っているが、ウィルスは持っていないという話は、コロナ対策として出てきたRNAワクチンとも関係があります。

いままでワクチンというのは、わざわざインフルエンザならインフルエンザウィルスをダチョウの卵か何かに感染させて、ウィルスを増殖させ、その増殖したウィルスのタンパク質部分だけを集めて人に接種するというようなことをしていました。

つまり、タンパク質をわざわざ人の手で作っていた訳です。

一方でウィルスが増殖するのに、人の体の中にあるタンパク質を作る工場を使うことから分かるように、人体は設計図さえあればタンパク質をたくさん生産する能力は備わっています。

だから、ワクチンの設計図であるRNAだけ注射して、あとは体内でワクチンのタンパク質を作ってしまおう、というのがRNAワクチンの発想。

つまり、もともと外の世界にあったタンパク質の工場を、人体内に移してしまおうという発想なのです。

RNAを人体に注射しても、なかなかその工場まで辿り着くのが大変で、どうすれば辿り着くのかずっと研究していたわけですが、やっとポリエチレングリコールという物質を膜として使えば、工場まで設計図を送り届けることができそうなことが分かって、RNAワクチンが実用化されたわけです。(ポリエチレングリコールは女性用化粧品等に入っている物質で、女性の中には日ごろから接触している人もいるので、どちらかというと女性側にアレルギー反応が出ることが多いのです)

いままでいちいちタンパク質の生産をしていたのが、設計図だけ作って注射してしまえばいいので、すぐにワクチンを開発し、生産・出荷できるわけですね。

ちょっと寄り道②-薬剤耐性菌

細菌対策で使う抗生剤は、そのままお尻から流れ出て、下水を流れます。結果として、抗生剤の効かない細菌が生き残る=ダーウィンの進化論風に言うと細菌が抗生剤に耐性を持つように進化する、という問題があり、厚労省もむやみに抗生剤出さないように勧告してるはずです。

風邪のほとんどはウィルス性ですが、万が一のためや患者さんの安心のためにも、抗生剤を出すケースは多いと思います。

しかし実際はウィルス性の風邪には効かず、ただ自然界の細菌が薬剤耐性菌に進化するのを助けてしまっているだけなこともあるということです。