はりねずみ教

難しいことを分かりやすく!

資本主義とは?共産主義とは?わかりやすく!

今回は、資本主義と共産主義について解説したいと思います。

最近は資本主義の問題がたくさん噴出しています。資本主義を全否定する気はありませんが、共産主義的考え方も検討の余地があるように思います。

目次

資本主義について

資本主義とは何か

資本とは商売の元手のことで、お金や生産設備などを指します。資本を各人で出し合う=共同出資などをして、会社を立ち上げ、その資本金を元手にビジネスを行っていくのが資本主義です。

誰が始めたのか

資本主義的な経済活動を始めたのは、キリスト教徒、そのなかでもカソリックではなくプロテスタントだったと言われています。

こちらの記事(ユダヤ教/イスラム教/キリスト教の関係と違いを分かりやすく! - はりねずみ教)でも書きましたが、プロテスタントの人たちは、天職=神から与えられた仕事を全うすることが、救済=最後の審判の時に天国に行くことにつながると考えていたため、与えられた仕事を全うする性質を持っていました。それが近代的な組織的資本主義を生むことになったのです。

この話、資本主義の起源がプロテスタントにあるということを明らかにしたのが、M・ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神です。

資本主義に対する批判/共産主義とは

資本主義に対する批判は、主に次の3つであると考えます。

それぞれ説明していきたいと思います。また、一部の批判が共産主義へつながっていきますので、共産主義とは何かについても、同時に説明していきたいと思います。

格差拡大

まず格差拡大です。

資本主義により格差は拡大し、王政や貴族政の頃と同じように資本主義は階級闘争に陥ってしまうだろうと19世紀に見通していたのが、マルクスです。

その階級闘争の歴史から脱却するための方法としてマルクスが考えたのが、共産主義でした。

共産主義とは、一言で言えば、資本家(資本金を拠出し、株式等を持ち、会社を所有する人たち)を廃し、すべての資本を社会の共有物とし、資本家に権力を握らせることなく、労働者たちが主権を握るべき、という思想です。

連合赤軍ソビエト連邦、米国における赤狩りなどで、共産主義は印象が悪いかもしれませんが、もともとマルクスが考えていたことは、決して過激な思想ではなく、社会の平等を説いた経済思想だったのです。

21世紀に入ってから、トマ・ピケティというフランスの経済学者が『21世紀の資本』という書籍を発表し、その中で「歴史的に資本主義においては、資本収益率は経済成長率よりも高いため、格差は拡大する」と指摘しました。かみ砕いて言うと、

  • 過去にさかのぼってデータを調べてみると、資本主義経済においては資本家の収入の増加率が労働者のお給料の増加率よりも高いことが判明した
  • したがって資本主義経済においては格差は拡大するに決まっている

と明らかにしたということです。

資本主義においては格差が拡大するという19世紀のマルクスの予想は、21世紀にデータによって裏付けされたわけです。

環境破壊

続いては環境破壊です。

経済学の分野に、「外部性」という用語があります。「外部性」とは何かというと、社会的には問題になるようなことを、経済活動にしか気を配らない企業がしてしまうことです。企業の活動は社会に様々な影響を及ぼしますが、営利目的の企業からするとどうでもよいこと=企業の意識の「外部」にあることを「外部性」と言います。

この外部性の最もたる例が、公害や地球温暖化などの環境破壊です。

最近はずいぶん環境に配慮する企業が増えてきましたが、もともと資本主義は環境よりも金銭のやり取りにフォーカスを当てていましたから、企業にとっては環境は「外部」だったわけです。

現在大阪市立大学で准教授を務める斎藤幸平は、歴代最年少かつ日本人では初めてドイッチャー記念賞(マルクス研究界最高峰の賞)を受賞したのですが、その受賞作のタイトルが「Karl Marx's Ecosocialism(訳:カール・マルクスのエコ社会主義)」で、マルクスが実はエコな社会主義を構想していたのではないかと指摘したものでした。

斎藤幸平の指摘に沿えば、マルクスは資本主義の環境破壊という問題点も視野に入れたうえで社会主義共産主義を構想していたことになります。

ものすごい慧眼です。

ナショナリズム

いままで見てきた格差の拡大や環境破壊は、資本主義の問題点としてよく指摘されています。

しかし、自分はこのナショナリズムも、資本主義の大きな問題点だと思います。

ナショナリズムを資本主義と結びつけたのは、ベネディクト・アンダーソンです。彼は主著『想像の共同体』の中で、出版資本主義がナショナリズムを生み、ナショナリズムが戦争を生んだ、と指摘しています。

何が言いたいかと言うと、ナショナリズム=我々は日本人であるという感覚、彼らは中国人であり我々とは違うという感覚、Us and Them(我々と彼ら)というこの感覚は、出版資本主義によってもたらされる新聞や雑誌、書籍などによってあくまでもイメージとして形づくられたものに過ぎないということです。例えば、出版物に載っている「日本」の歴史や人口、地図などを見せられることで、人々は「日本」という国のイメージを形作っていくわけです。

ベネディクト・アンダーソンはこのように書いています。「国民はイメージとして心の中に想像されたものである/国民は限られたものとして、また主権的なものとして想像される/そして、現実には不平等と搾取があるにせよ、国民は常に水平的な深い同志愛として心に思い描かれる。そして、この限られた想像力の産物のために、過去二世紀にわたり、数千、数百万の人々が、殺し合い、あるいはみずからすすんで死んでいったのである

「現実には不平等と搾取がある」と指摘しているところに、マルクスの影響が見て取れます。実際、『想像の共同体』の中でベネディクト・アンダーソンは、何度もウォルター・ベンヤミンというユダヤ系のマルクス主義哲学者・芸術批評家に言及していて、影響を受けていることが伺えます。

このような、出版資本主義によってもたらされた「我々」のイメージのために戦争をするようになったのが、20世紀の大きな流れでした。

そして、その流れ、その悲劇が、21世紀も続いていることがよくわかるのが、ロシアによるウクライナ侵攻です。

ウクライナは、「ウクライナには、NATOに加盟する自由・主権がある」と主張し、NATO加盟にこだわり続けたことから、NATOの東方拡大・軍備化を嫌ったロシアによる侵攻を招いてしまいました

この、「ウクライナのことはウクライナが決める」「隣国のロシアの言うことなど聞く必要はない」という主張は、内向きなナショナリズムです。騒音などで隣人から苦情が来ようと、「我が家で何しようと勝手だ」と言うようなものです。

このウクライナの内向きナショナリズムは、トランプ大統領の「国際社会の言うことなど聞かない」「自国民の意見が第一」というアメリカ・ファーストと正直同じレベルの内向きナショナリズムだと思います。トランプの内向きナショナリズムの影響は政治や経済活動にしか影響を及ぼさなかった一方で、ウクライナの内向きナショナリズムが戦争を招いたことを考えると、むしろ後者の方がより過激だとさえ自分は言えると思います。

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トランプ大統領の内向きナショナリズム=America First
(出所:アメリカファーストの極み

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ウクライナの内向きナショナリズム=「ウクライナにはNATO加盟の権利がある」

このように、資本主義はナショナリズムを生み、ナショナリズムは戦争を生むのです。強烈な資本主義批判だと思います。

資本主義vs共産主義

続いて、資本主義vs共産主義、特に冷戦期の米国とソビエトの関係についてみていきたいと思います。

共産主義ソビエトが崩壊した一方で、資本主義のアメリカは残存しており、共産主義の敗北・資本主義の勝利は決まった、というような意見を目にしたことがあると思います。

しかし、それはあまりに短絡的な結論です。

まず、ソビエトが崩壊したのは、共産主義に問題があったからではありませんソビエトは、ソビエト連邦の名の通り連邦で、複数の共和国が連邦下に入っていたのですが、その各共和国に対して権限委譲して地方分権を進めるのか、もしくはソビエトの権力を強化して中央集権を進めるのか、そのどちらが望ましいかで各共和国の意見が分かれたことが発端となって崩壊したのです。

共産主義の失敗が原因で崩壊したわけではないということです。

また、仮に共産主義が原因で崩壊したのだと仮定しても、それが共産主義という理念に問題があったのか、共産主義という理念の実行に失敗したのかは、分けて考える必要があると思います。

要は、ソビエトが崩壊したからといって、共産主義の敗北が決まったというのは、あまりに早計だということです。 

共産主義的アプローチの価値を見直すべき

ここまで読んで頂ければ分かると思いますが、自分は共産主義的アプローチの価値を見直すべきだと思います。

資本主義には、格差拡大、環境破壊、ナショナリズムとそこから生じる戦争という3つの大きな問題がありますが、そのどれについても、共産主義的立場から考えることはヒントになるはずです。

また、20世紀、ドイツやフランスで起こった西洋哲学批判の流れは、やはりその源流にマルクス(やフロイトがいました。(ドイツはフランクフルト学派、フランスはフランス現代思想のことです。)なぜ理性の国ドイツで、ホロコーストのような暴力が起きたのか、なぜ我々は自由になれないのか、といった問題を、マルクス等を参照しながら考え、西洋哲学批判に至ったのです。

今の社会は、経済活動にしても、政治活動にしても、哲学・思想にしても、アメリカにかなり寄ってきています。(経済活動は資本主義、政治活動は民主主義、哲学・思想はアメリカの哲学と言われるプラグマティズムが、世界的にも主流になりつつあるということです)

このような流れで本当に良いのか、格差拡大や環境破壊、戦争などの問題が起きている中で、改めて、共産主義の視座を含めて、考え直しても良いと思います。